旅行記|散歩|KakiKakiMom's Travelog

« シャーロキアンを目指す旅③ | メイン | シャーロキアンを目指す旅⑤ »

シャーロキアンを目指す旅④

3日目 カンタベリー!幻の?カンタベリー駅

6月27日(日)
「リーズ城、カンタベリーとドーバーの一日」  
7時半に朝食をとり8時にホテルを出る。集合は8時50分だから十分に余裕がある。
リージェント街をまっしぐらに下ると20分かからずにマイバスセンターへ着いてしまった。
ほとんど一番乗り。
二台目のバスに乗って待っていてくださいと言われたものの、そのバスはまだ道路に出て来れずにいる。
なんてったって幹線道路。朝のこんな時間に何台ものバスを並べておくわけにも行かないのだろう。
今日は総勢30人ということでバスの座席にはかなりの余裕がある。
「こういう余裕のある時は二人で並ばないでそれぞれに窓際の席を取る!」
これは彼女に教わったのだ。
それまで友人との旅と言うといつも並んで座るのが当たり前で窓側を交代したものだったが、「なるほどね!」目から鱗。
「そういう手も有りなんだね?」
「だって、あんただって絶対写真を撮りたくなるでしょう、沿道の。私だって撮りたいしさ。」
バスは時間通りに出発。
ヘイマーケットからトラファルガー広場を通ってテムズ川畔へ、ブラックフライアーズ(ブラックフライアーズというのは修道僧のあの黒い服のことだそうだ)付近からトンネルの中を通り抜けた時に、ここはどこだろうと思って表示を探していたら、なんとアッパー・テムズ・ストリートからロウァー・テムズ・ストリートに入るところだった。
高速道路のようにすっかり囲われてしまっていて、ホームズ当時の面影は全く残っていないようだった。このあたりのことも何度も正典に出てくる。ごみごみとした怪しげな貧民窟として。
「唇の捩れた男」で阿片窟のある怪しげな町、ロンドン橋下手の北側にあるアッパー・スワンダム小路として出てくるのがここだと私たちは勝手に決めていた。
アッパー・スワンダム小路というものは地図を探しても無かったのだが、この橋の近くにスワン・レーンと言うのを見つけたし、ロンドン橋の北側となるとここしか考えられないので。
時間が有ればこのあたりも探索に時間を懸けてみるかと思っていたのだが、これでは歩く価値は全く無いかもしれない。
近くにその当時を思わせる小路が残っていないとは限らないが、反対に残っていたとしたら、それこそヒュー・ブーンの奥さんのように迷い込んだら危険かもしれない。
一見して、アッパーもロウァーもこんな通りでは人は殆ど歩いていないだろうと思われた。
間もなく新しい建築物の多い地域ドッグ・ランズとかアイル・オブ・ドッグズとか言うあたりを通り抜け、テムズ川の川底を通り(グリニッジ・トンネル)、グリニッジへ。
どこにグリニッジ天文台が・・・ときょろきょろしているうちに通り抜けてしまい、全くの郊外の眺めになった。
ケント州だ。
知識の豊富なガイドさんのガイドがここから熱を帯び始めた。
「ケント州はホップの名産地でもあり、りんごの果樹園の多いところでもあるから、ローカル・エールとサイダーは試す価値がある…」
から始まって、とりあえずは最初に行くリーズ城のプロフィールを。
「リーズ城は紀元八百年ごろアングロサクソン系の人々によって建てられたと思われる、人口湖に面する女性的な華奢な城です。実際六人の女性が城主となっていて、最後の人はアメリカ人のレディ・オリーブ・ベイリーと言う人で、その方が亡くなって以来今はリーズ財団の管理下にあります。ケルト、ローマ、アングロサクソン、ウィリアム・ザ・コンクェスト、ノルマン、チューダーと幾つもの王朝の変遷を経て、エドワード六世が部下に払い下げるまで王族の持ち物でした。千二百年代の要塞の形、千五百年代のギャラリー、千六百年代のバロアのキャサリン王妃のベッドなども見られます。キャサリンの夫のヘンリー五世はランカスター王朝の王なんですけれど、キャサリンの不倫の息子ヘンリー六世が始めたのがチューダー王朝の始めです。それにヘンリー八世の六人の王妃たちの遺品もありますね…と、六人の王妃の末路、三人の子どもたちの治世、ジェーン・グレイの話にまで飛んで、ハンプトン宮殿の幽霊、カトリック、プロテスタント、英国国教会の話と歴史のあらましが立て板に水で語られ続けた。
「そうそう、INVCと言うのがケント州の象徴なんですよ。インヴェクタつまり征服されないって言う意味です。ここはローマも、ナポレオンも結局征服できなかった土地なんですね。」
やっと到着。
「はいチケットをお渡しします。お庭が綺麗です。お庭を見てから城へ入ってください。道を間違えないように。お城に入るには地下のワインセラーから入るんですよ。集合時間に遅れないように回ってくださいね。裏のラビリンスは入らない方がいいですよ。間に合わなくなる可能性があります。行きたい人はそこに先に行っちゃってくださーい。」
開放されて、ほんとに今一番美しい季節の英国の緑の中をずーっと歩いて、城が見えてくるとなんと景色の美しいこと!

101london1_03.jpg
〈写真 麗しのリーズ城〉

皆てんでばらばらに思い思いの所で写真を撮り始める。池が輝き、水鳥がのんびり漂い、花が咲き乱れ、西洋柳がたっぷりの太いからだの影を落としている。グンネラ(鬼蕗)と言う巨大な北海道のラワン蕗よりごっついのが大きな葉を広げている。その下にかがむと私はアリス?って!
水辺に沿って城を横に見て橋を渡ると城の横手に花の咲き乱れる庭が広がっている。ラベンダーの濃い紫、タチアオイの輝く白と愛らしいピンク、当然あるべきバラ、香り高いゆり、名も知らぬ花々。
「ほら、花見のおばさんじゃないんだから、肝心の城。時間がなくなっちゃうよ。」
誠に引っ張ってくれてよかった!
本当に庭に心を奪われていると時間が無くなるところだった。
ロンドンは魔力的!だけどイギリスの郊外は魅力的!いつかは英国一周の旅もしなくちゃ!
無事時間に集合してカンタベリーへ。
幾つかのツァーの中でカンタベリーを選んだのは勿論「最後の事件」で、モリアティ教授をまいた重要地点だからだ。
だけど多分こういうツァーだと、つまりバスなんかで行ってしまうと、本命の駅は立ち寄らないだろうなぁ。それが残念。
リーズ城は綺麗でイギリスの田園の魅力を見せてくれたけれど、旅の趣旨を厳密に考えるなら?やっぱりカンタベリーへは自分たちで電車で行くべきだったかもしれない。
もっともこの方が迷いながら行くより合理的にカンタベリーの町と知り合いになれることは確かだと思うけれど。
バスの中から面白い建物が見られた。オーストと言ってホップを乾燥させるための建物だそうだ。三角屋根に大きな白い角のような煙突が突き出ている。
「ここは又あまずらの産地でもありますね。」とガイドさんは当たり前のように言う。
「油を取るんです。」
そしてこれから行くカンタベリーの予習が始まった。
高校生の頃にチョーサーの「カンタベリー物語」を読んでいるので、ホームズによるものだけではない興味は抱いている。
カンタベリー大聖堂への、また古い巡礼地としてのカンタベリーにも。
590年代のローマのオーガスティンによるキリスト教の伝来。今のカンタベリー大聖堂、ヨーク大聖堂を拠点とした布教活動、英国国教会への簡単な歴史の流れ。カテドラル、チャーチ、チャペル、アベィなどの違い、ヘンリー二世によるトーマス・ベケットの暗殺等々についての話を聞く。
そして観光客(現代の巡礼?)でごった返すカンタベリーの町へ到着。
まるで観音様と仲見世?
聖堂の直ぐ近くの駐車場からシティ・ウォールを横に見て、ブロード・ストリートを歩き小道に折れてセント・メアリー・マドレーヌ・タワーの前を通りこすとクライスト・チャーチ・ゲートの前。
中へは入らず、まずは仲見世周遊。
ガイドさんに連れられて、まず聖堂付近を観光する。と言ってもハイ・ストリートの辺りをさっと一巡りしただけで、
「ここでも、ここでも食べられますよ。ここで何か買って食べるのでもいいですよ。」
殆ど昼食の案内だ。
ゲート前の小道を少し行って「ここに甘いファッジのお店がありますね。甘いのに強い方はどうぞ。いけるという話ですよ。」みたいな。
キング・ストリートに折れてハイ・ストリートに入る。
「有名な古い歴史のあるお店です。お土産が買えますね。」
そのウィバーズ・ハウスの横に小川が流れていて隅田川沿いの運河の渡し舟みたいなのが船着場から観光客を乗せて出て行くところだった。これがストゥア川。

101london1_04.jpg
〈写真 カンタベリーの町〉

そのままパブリック・ライブラリーの大きな特徴のある目をそばだたせるかのような建物(ちょっとお化け屋敷の洋館みたい)の前を通りマーサリィ・レーンを入るとさっきのクライスト・チャーチ・ゲート。
そしてやっと門を潜れる。
クライスト・チャーチ・ゲートから入場。この門はキリストと聖人たちがズラーっと居並んで迎えてくれる天国の門と言った趣だが、色彩の所為か、素朴な彫刻のかもし出すユーモラスさの所為かその表情の所為か、なんとはなく可愛いといった感じがしてしまう。
それともやはり重々しいと表現すべきなんだろうかと戸惑ってしまうような目覚しい門だ。だがこれはヘンリー八世による破壊前のオリジナルの姿をとどめる貴重な門なのだ。
写真を撮りたい人は許可書を買ってくださいと言われ、殆どの人が購入に行く。
許可証は胸にワッペンのように貼り付ける。これで大手を振って写真を取れるのだと思うとなんとなくおかしい。
合理的と言えばそうなんだけれど。
ガイドさんが「一応さっと中を案内して、後は自由時間にします。集合はクライスト・チャーチ・ゲート門前の小さな広場で。昼食を取れるところも時間もここを出たらもうありませんよ。」と忠告付きで先にたつ。
現在の建物は1503年完成したものだと言う。この五百年の重さ。異常に古びて見える外壁の凄さ荒々しさと引きかえて、この内陣の身廊の天井の荘厳で美しいこと!ベル・ハリ・タワーの天井の扇形の装飾のとりわけ美しいこと。見上げて感心している暇もなくさっさとガイドは進んで行く。
「ハイこれがトーマス・ベケットが殺されたところですね。」
「ハイこれがその時使われた剣です。」
といたって明るく言う。
十二世紀の出来事とはいえね。ベケットの墓のあった所は、ヘンリー八世によって取り壊された跡に今は蝋燭が灯されている。
ベケットは聖人に列せられているということを、その灯され続けているろうそくがひっそりと教えてくれる。
人が次々に訪れてくるが静かでひんやりした空間だ。
「ハイ、これは十三世紀のステンドグラスですね。見ましたか?次行きますよ。はい、これがブラック・プリンスの墓ですよ。はい。」って感じで早周り。
解散してヤレヤレゆっくり見直そう。
「あそこの売店でサンドイッチ買ってベンチで食べちゃおうよ。外に出て食べると時間が無くなるものね。」
大急ぎでタワーを見ながらの昼食を済ませ、寺院へ戻る。

101london1_05.jpg
〈写真 カンタベリー大聖堂〉

グレート・クロイスターと呼ばれる柱廊で囲まれた四角い中庭。
柱の織り出す影の美しさ。その柱の線が伸びて形作る天井の造詣のデザイン性。
十二世紀に作られた給水塔・ウォーター・タワー。その古く質素で荒削りな佇まい。
裏手に回るとやはり十二世紀の寄宿舎跡。天井も部屋も崩れ落ちて残るのは一部の壁の連なりだけ。窓や入り口のアーチ型の石組みを見せて過去をしのばせる。そのアーチは過去から現在への連なりを際立たせている。
まだ少し時間が有ったので、先ほど教えてもらったクライスト・チャーチ・ゲートのならびにあるファッジの店へ行って一つ試しに買ってみる。カメラを向けるとお兄ちゃんがおどけてポーズを取ってくれる。
チョコのマーブル流しみたいなのを買って、その重さに驚いた!が、一口かじってその甘さにモット驚いた!
比較的甘いものに強い私が
「うわぁ、甘ぁ~い!」
だから、甘いのにそれほど強くない彼女は
「何これ。食べられたもんじゃないよ。うぇ!」だもの。
「うぇ!」は無いでしょうが。
持ち帰ったもののホテルの部屋のテーブルの上で食べてもらえず、二日後には干からびていた。ごめんなさい!
さて、次はドーバー城からドーバー海峡へ。
ドーバー城は丘の上に聳えていて、要塞としていかにも機能していると言う感じだった。リーズ城はマナーハウスの大きいものっていう感じがしたけれど、これはまさしく要塞城かもという様子。
「だけど残念ながら、バスからだけの見物ですよ。良く見てください。今だけですよ。」で、通り過ぎてしまった。
絵のような城という印象だけで終わってしまったのが本当に残念。
そしてもうドーバー海峡。
あのアルビヨンと呼ばれる白い崖。
「これがドーバーの白い崖なんだ!」
幾つかの詩や物語で読んで一度は見てみたいものと思っていたのだ。本当に白い!!
海から近づいてきてこの白い崖を見たときの感動。または長い遠い旅から帰って来た者にこの白い崖が呼び起こす歓喜。

101london1_07.jpg
〈写真 ドーバーの白い崖〉

「あぁ、アルビヨンだ!生きて帰ってきたぞ!」
ローマ人が!バイキングが!そして十字軍から戻ってきた騎士が!
私が想像していた物はそういうもの。
だけど、バスが止まったところは海岸を走る道路横の大駐車場だし、直ぐその前の海岸はしっかり護岸されている。その下に少し残された浜辺は白とグレーの丸い石に覆われている。
「アルビヨンと呼ばれる白壁からの白い石の中になぜか火打石が混じっています。白亜紀の地層です。昔やってきたローマ人が「白亜の島」カンブリァと呼んだのでその名が今も残り、湖水地方をカンブリァと呼ぶのだそうです。」
カンブリァ!確かにローマっぽい言葉の響きだ。綺麗な響きでもある。
向こうのほうの海岸は立ち並ぶホテルのプライベートビーチに区切られている。その海を囲むように堤防が腕を伸ばし、その先に門柱のように二つの灯台がたっている。あとほんの少ししたらあのプライベートビーチが繰り広げる賑わいの想像がつく。
中世はもう遠い!
帰りは早く静かに、グリニッジの古い展望台の近くを通って、市内へ。
ところが着いた途端に雷が鳴り響いて豪雨!
これだけは中世から変わらない轟き?
夕食は中華料理が食べたいと言う彼女の希望で(アルビヨンともカンブリァとも何のつながりも無いよーとは思うものの、空腹だし)中華街へ行くことにした。
グルナー男爵の差し金でホームズを襲撃した者たちが逃げ去った、ピカデリィのカフェ・ロワイヤルの裏口のあるグラスハウス街を回ってシャフツベリー街からソーホーに向かう。雨の中、カフェ・ロワイヤルならともかくその裏口を写真に撮る旅行者なんてそうは居ないだろう。これこそがわが旅の醍醐味?
行きたい店は決まっていて、ジェラルド街に有ると言う。ウォルドーフ街へ折れると直ぐにジェラルド街、中華街の門があって、目指す店は直ぐに見付かった。
全くおばさんという者はしゃべっているか食べているかだね。
しかもどちらに関してもそれなりにこだわりがあるから厄介!
んな訳で、恥ずかしくて詳しくは語れません。
でもメニューは漢字だし、見慣れた料理だし、安心して頼めたことは事実だから、どんなに意地汚かったかは…私の胸だけに収めとこっと!
とにかくロンドン!店から出たら雷が鳴っていたことなど嘘のような明るい夕べがきらめいていた。
だから腹ごなしにぷらぷら帰ることにして、シャフツベリー街、リージェント街、ハノーバー・スクェア。
もう閉まっていたけれど、イギリスやのウインドウにウィンブルドングッズを確かめて「寄れたらいつか寄ってね。いいもの有るかも。」
ついでだから少し戻ってセント・ジョージ教会の前に来たら、突然角を曲がって現れた日本人のおばさん一人!
「ねぇ、私さっき着いたところなのよ。あなた方もう買物は大分済んだ?バーゲンもう見て歩いたんでしょ?いいもの手に入れた?」と、まるで千年いや百年の知己のようにいきなり話しかけてきて、私たちはあっけに取られた。
「この時期ロンドンを歩いている日本人は皆買物目当てかい?」と突っ込みたい気持ちを抑えつつ、言葉にしてはおとなしく
「いいえ、でもどこでもバーゲン真っ只中のようですわ。三越でも昨日はめったに無いバーバリーのバーゲンですよーって、アナウンスしてましたわ。」
「あらっ、そう!明日一番に三越寄るわ。私ホテルそこなのよ。ジャァネ?」
あっけに取られた私たちの前には夕焼けの赤が思いっきり広がっていた!
あーぁ、ホームズの世界はたった一人のおばさんに駆逐されてしまった。
「花嫁失踪事件」で式の直後に花嫁に逃げられたローバート・セント・サイモン卿みたいに、今夕はセント・ジョージ教会は吾らという絶好の賛美者を失ったようだった。
ついてない教会ね?
毒気に負けた私たちは無口になっておとなしくヘァウッド街からオックスフォード街に抜けてホテルにたどり着いた。
全くお疲れさんです!

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://kimuriders.sakura.ne.jp/mt/mt-tb.cgi/144

Name

E-Mail

URL

Comment
Very Happy Smile Sad Surprised Shocked Confused Cool Laughing
Mad Razz Embarassed Crying or Very Sad Evil or Very Mad Twisted Evil Rolling Eyes Wink