東欧4ヶ国の旅⑧
第7日目 (木) 最終日も有効に!
最終日の予定は11時にホテルを出発して帰路につく。
だから「10時45分までに集合してください。それまでは自由時間で、 各自チェックアウトしてロビーに集合。」
ということになっている。
「ホテルのチェックアウト時間は10時ですから間違えないように。」ということだけが添乗員さんからの注意。
私たちは6時に起きて早めに荷物を作り上げ朝食をとって8時にはチェックアウト。
荷物をフロントに預け最後のウィーンの街歩きに出発。
シュトウベン駅から2番のトラムでユリウス・ラーベ・プラッツ駅で下車。
目的は郵便貯金局。
ワグナー後期の代表作で彼の近代建築の到達点だと言われている建物だ。
朝早く誰もいない街角は森閑として良く見ると装飾の豊かなビルなのに、四角形の建物はまるで何の飾りも無いかのように朝日を照り返している。
屋上の女神のエキゾチックさ。
外壁のボルトが照り返す輝きそういうものが見えてくるとあぁ、美しいビルだなと思われてくる。
建築物というより「ビル」という感じだが、これは端正に美しいビルだ。
オフィスだと言う事を体全体で表しているが、非常に優美な感じも受ける。ただ 朝早すぎて中が見られなかったのが残念だ。
床はガラスブロックが敷かれ、アルミ皮膜の鉄柱に支えられた優美な曲面の硝子天井が覆っている・・・という空間を見ることが出来なかった。
確かここのインテリア、家具なんかも見所だと読んだ記憶があるのだが。
辺りは官庁街で、リンクの外側にはラデッキー元帥像が立っている立派なビルがあった。
そしてその隣には応用美術館。
ここもまだ開館していない。
しかしリンクに面した正面だけでも見る価値がある。
ネオ・ルネッサンス様式の建物は綺麗な温かい色の煉瓦の外壁と、美しいモザイク画が際立って目をひきつける。
その前からドナウ運河の方を見ると、まるでプラハのダンシング・ビルを思わせるようなモダンなビルが建っている。
アスベルン橋の袂。
「あれはなんだろうね?」
「うん、ちょっと面白いね。」
「だけど地図には何も載っていないから普通のビルだよ。それより街中!」
「そうだね時間もないし。」
後で探した地図に「ウラニア映画館」「ウラニア天文台」と書かれていたがあのビルのことなのだろうか?
シュトウベンからまたリンク1番に乗ってラートハウスプラッツ・ブルグシアター駅で下車。
ここからプラプラと散歩しながらカフェ・デーメル迄行ってお茶して11時にはホテルへというつもりなのだ。
ブルグ劇場は開いていて、中にはチケットを買いに来たらしい人々が並んでいた。
しかしそこから余計なところへは入れないようにそこだけロープで区切られている。
私たちはその美しいといわれる空間のほんの一部をも窺い知ることもできないまま、 入り口のドァの内側だけ除いて見るだけで諦めなければならなかった。
横手に回り、バンクガッセからゆるくカーブしている道に入りのんびり歩いていく。
ちょっとユックリしすぎたらしく後が押し詰まってしまった。
横手にフランシスコ教会、前の方に見えている緑はフォルクス庭園になるらしい。
左のビル街は内務省。
首相府の間から聖ミヒャエル教会も見える。
突き当たりはホフブルクのミヒャエル門。
その向かいに昨日通りながらチェックし忘れたロース・ハウス。
何しろ当時こそ「珍しいくらい装飾も何も無い端正な殺風景なビル」に見えたかもしれないが、
今の私たちにとっては実生活に余りにも違和感の無い建物だったので、うかっと通り過ぎてしまったのだ。
改めてロース・ハウスをしげしげと見てその建てられた時間に思いをはせていたら、
「あ、ヘレンガッセじゃないの。」と彼女は喜んで、
「私この通りの事を読んだんだった。ちょっと写真を撮ってくるね。」
と道路標識を撮りに行ってしまった。
この通りの知識の無い私の方はミヒャエル門前のローマ遺跡の写真を撮ってその遺跡を見下ろして待っていた。
後で思えばアムホーフ広場の方まで歩いて見るのも良かったなと思うけれど、昨日も歩いたところをまた歩いてしまった。
デメルに行くには未だ早すぎる。
ホフブルクの建物に沿って、
「多分このあたりはスイス宮のスペイン乗馬学校辺り、ここはリピッツァーナ博物館かな?」
ヨーゼフ広場を抜けるとまたパラヴィツィーニ宮殿。
「「第3の男」は本当にここだったかなぁ?」
と思いながらまた写真を撮っておく。
アルベルティーナ宮殿・美術館を過ぎればカフェ・モーツアルト。
お土産の駄目押しと思ってこの直ぐ横にあるプラザ・ウィーン・ジャルックスへ行ってみたらまだ開店前。
それじゃぁとでリンクを渡って一昨日の「ワルツ」へ行ってみたらここもまだ開店していない。
9時半開店と店の前に書いてあるのにもう9時45分だよ。
外国は時間本当にいい加減だねとぼやきながらデメルのほうへ戻ることにした。
ごちゃごちゃと通った道は、この2日で出来た勘だけで歩いたので、
かえってよく覚えていない。
ドロテァ・ガッセを通り横丁から福音教会の塔を見てミヒャエル教会の前へ出てコールマルクト到着。
10時だ。
「さぁ時間もなくなったし、問題はデーメルが開いているかだね?」と、コールマルクトを進んでいくと、 もうしっかり店の前のテーブル席ではパラソルも開きコーヒーを飲んでいる人たちがいた。
私たちは「内がいいね、折角だから。」と中に入ってケーキなどのケースの真ん中の席に案内された。
朝食の食べすぎでまだお腹がすかないが、ザッハトルテは食べたい。日本の店と味に違いがあるかな?
私はアンナ・カフェを彼女はアインシュペナー。
そして一つのザッハトルテを注文したら、
にっこりしたウェートレスさんが「クリームを付けるか?」
「イエス」
なんと気の聞く店員さんよ!
ちゃんとナイフとホークを二本づつと予備のお皿をも持ってきてくれた。
「お店の中の写真とってもいいかしら?」と聞いたら
「勿論。」と言って
「二人を撮ってあげましょう。」とも言ってくれた。
だから嬉しげな二人の顔がケーキを前に舌なめずりしているでしょう?
前に友人に聞いてた
「ウィーンのザッハトルテなんて甘くて食べられたものじゃない。日本のザッハトルテのほうがズーットおいしいわよ」
という滞在報告は誤り!
たっぷり添えられたクリームも全然甘すぎずケーキも程よい甘さ。
私が甘党だから言うのではなく、ウィーンのケーキが時代に合わせて変化してきているということだろう。
いい気分の20数分間!で、また時間との競争。
小走りでコールマルクトから走り出る。
アウグスティーナシュトラーベへ出たあたりで宗教儀式の行列と行き会った。
天幕の中を静々進む司教さんと取り囲む司祭さん、信者の人々の長い行列だ。
暫く見とれていたら時間が無いのに気が付いて、その行列を見物に集まった人々を掻き分けるように逆走した。
恥ずかしいったらね。
オペルからまたリンク2番に乗ってホテルへ走り戻って預けてあった荷物を受け取ったら、ぴったり10時45分。
「あなた方っていつもぴったりに滑り込むのね。」と笑われた。
「でも遅刻は一度もしなかったわ。」
ウィーン13時55分発OSO51便、成田着は翌日朝8時25分着の予定。
飛行機に乗って空から地上を見下ろしても、もう私たちの歩き回った路地が見えるわけでもない。
あぁ、確かに旅は終ったのだという寂寥感がある。
旅の終わりは食べつくした皿を見ているようだ。
吐息する小さき旅の宴の後
シュユの間を飲み干して空にいる
今度の旅の最後の収穫は免税される分を空港で現金で返してもらうことが出来るという事を知ったことだ。
今までカードで払ってカードで返金してもらうようにしていたら戻らなかったこともあった。
ちゃんとANAやJTBの係員さんにしてもらったり、現地のデパートで免税手続きをしたものまでも帰らなかったことがあるのだ。
そんなに高い買物をするわけでもないので諦めてしまっていた。
QLライナーの直ぐ横にそのカウンターがあって、私はその場で約5千円余りに過ぎないけれど返してもらえた。
成田空港で皆さんとさよならして、良き旅の道連れともお別れして帰宅!
4カ国のはしご。
はしごにチョイト腰掛けただけの旅だったかもしれないけれど、寂しさのほかに僅かな満足感があったのはなぜかしら?
美しいもの、見たことの無いものを追って、大事な時間を友人と思いっきり使い切ったからかも知れないね。
またいつか見知らぬ土地に旅したい!デモ?同じ土地も再訪したい!欲張りね!